「ただの葉っぱがお金になる」は、今や次の奇跡に向け歩み始めている

 「ただの葉っぱがお金になる」  近所の山の落葉を、おばあちゃんたちが集めて、ICTを活用して売って稼ぐ。メディアで幾度も報道され、有名になっていましたね。
 国内市場シェアを席巻した今、更なる飛躍に向けて、世界進出への歩みを始めているのだそうです。攻めのTPP活用で、他の農産物にも共通するところもある様です。




 「ただの葉っぱがお金になる」。今やいろどりビジネスはそんなキャッチフレーズで表現できる範囲を自ら飛び越えていこうとして、「次の軌跡」へ歩み始めているのだそうです。

 
“葉っぱ”を武器に世界を攻める! いろどりが狙う「次の奇跡」 | 常識を越えろ! 変革者たちの挑戦 | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉:日経BPオールジャンルまとめ読みサイト



 徳島県上勝町の第三セクター、いろどりによる“葉っぱビジネス”は現在、日本料理を彩る「つまもの」市場シェアの大半を占めている。いろどりのビジネスは、なぜこれほどまでの成功を収めることができたのか。他の自治体が地元の名産品や特産品で同じような成功を収めるためには、何が必要なのか。

 また、これほど成功しているにもかかわらず、同社は現状に満足せず、さらなる成功を目指し動き始めているという。
国内市場シェア拡大による成長の余地が少なくなってきた現在、どのような方向を向いてビジネスを展開し、成長を遂げようとしているのか。そのために克服すべき課題は何なのか。

 上勝町における葉っぱビジネスの創始者であり、いろどり代表取締役社長を務める横石知二氏へのインタビューを中心に探っていきたい。



■おばあちゃんはなぜパソコン・タブレットを使いこなせるのか?

 前編で紹介したように、
いろどりビジネスの中心になっているのは、青果市場からの注文状況やそれに対する出荷状況をリアルタイムで確認できる「上勝情報ネットワーク」だ。

 しかし、葉っぱビジネス以外に目を向ければ、こうしたシステムは
今や企業の多くが導入しており、決して珍しいものではない。ただ、約200軒もの農家が参加し、しかもその半分以上が高齢者という状況はきわめて珍しいと言えるだろう。

 情報システムというのは得てして「あんなこともこんなこともできる」という機能面で語られがちだが、毎日それを利活用するユーザーがいてこそ初めて成り立つ。せっかく高性能・多機能なシステムを構築したとしても、ユーザビリティーが悪くて誰も使えないのでは全く意味をなさない。

 そういう意味では、
「半数以上が高齢者」という状況下で使われるシステム、使われるユーザーインタフェース(UI)を作るというのは至難の業ではないだろうか。

 この点について横石氏は、
「人を動かすツボをつかむこと」が重要だと語る。

 ビジネス上の本質ではないところに、人を動かすツボがあるんです。たとえば『ものすごく隣人に対して負けず嫌いが強い』とか、
人を動かす“糸の引き方”を考える必要があります」(横石氏)。



 一般化すれば、
「自分にとってプラスになるかどうか」が多くの場合、人を動かすトリガーになる。これは地方であるとか高齢者であるとか関係なく、どこでも誰でも同じだ。

 「例えば『町づくり講演会をやります』と呼びかけても、『町の役職者や有力者が行くもので、私には関係ない』となってしまいます。でも、『今日はお米の値段が3倍になるヒントをくれる』となったら農家の人全員が来るでしょう。タブレットの活用も同じです。自分の成績表が出て、『注文取りは早い者勝ちだよ』ということになると、何が何でも押してやろう、使ってやろうという気持ちになるんです」(横石氏)。



■「ゲーム感覚」が医療費削減や町の発展に結びつく

 
「このシステムを使うと便利ですよ、何でもできますよ」では誰も動かない。しかし、「使わないと、お隣さんに取られちゃいますよ」と競争心をあおると「負けられるか!」と使い始めるようになるというわけだ。

 前編で紹介したように、上勝情報ネットワークの注文取りは「8時から10時までは1人1回、10時から11時まで1回、11時からしめ切りの12時までは無制限で取れる」という仕組みになっている。それぞれの時間帯に注文を取れるかどうかは完全に早い者勝ちだ。

 「まさにゲーム感覚ですね。負けず嫌いという多くの人が心に持つツボを突き、『あの人に勝ちたい』『勝った、やった!』と喜びを感じられるところがポイントなんです」(横石氏)。



 横石氏はさらに続ける。

 「実際に、このいろどりの仕組みをやればやるほど農家のみなさんは元気になっています。朝からみな頭と身体を使って生き生きと仕事をするので医療費もかかりませんし、十分な収入が得られるので生活保護受給者にもならず、災害などにも強くなる。すごく『地域に貢献する人』になるんです」。


<中略>



■後継者育成という課題にどう取り組むか

 順風満帆に見えるいろどりビジネスにもやはり課題はある。最も大きなものが「後継者問題」だ。いろどりは上勝情報ネットワークのサポートや営業活動のほか、後継者育成のために研修生を各農家に送り込むといったことも行っている。
過疎化・高齢化が進む上勝町にとって、若い後継者を呼び込めるかどうかは死活問題である。

 後継者というのは、文字通り「跡継ぎ」を意味する。1カ月から半年ほど農家で研修を受け、高齢で仕事を続けられない農家から土地を譲り受けるなどして、いろどりビジネスをスタートする。しかしその土地には先祖代々の墓がある場合などもあり、
実際に土地を譲ることのハードルはかなり高い

 一方で、後継者としてではなく、新たに土地を購入して樹木を植え、一からいろどりビジネスをスタートするというやり方もある。こちらの例も「既に2軒ほど出ている状況」(いろどり広報の大畑悠喜氏)だという。


<中略>



 「これまで実際にいろどり農家の後継者になった方のほとんどは、まずハローワークが実施する『基金訓練』という事業で半年ほど就農訓練を受け、その後、上勝町に移住してきて後継者になるというパターンです。これ以外でも後継者を何とか増やせないか模索しています」(大畑氏)。

 「葉っぱビジネスで、おばあちゃんが年商1千万円」というキャッチフレーズがテレビや新聞などのメディアに踊ると、若い人でも大きなチャンスが、などと思われるかもしれない。もちろんそのチャンスはあるのだが、実際にはそれほど甘くはない。

 「元々ここは生け花用の花木の産地で、土地も技術もノウハウもあります。よそからやってきてモミジの木を植えて3年待って、うまくいかなかったらまた3年となると、時間がかかります。当然、移住してすぐに1000万なんていう話にはなりません。そうした現実を見て、帰っていく人も少なくありません」(大畑氏)。



 とはいえ、後継者を探し、過疎化を食い止めようという関係者の努力は少しずつ成果を出しつつある。具体的に上勝町では、2009年前から2014年まで5年間で548人のインターンを迎え、その後20数人が実際に移住したという。内訳は就農者もいれば、いろどりに就職した人、レストランを開業した人など幅広い。当面の目標である人口2000人達成(現在は1705人)まで先は長いが、着実に一歩ずつ踏み出している状況だ。



■海外輸出で市場拡大、国内市場の活性化も図る

 現在、いろどりが積極的に手がけているものの一つに「海外への輸出」がある。
国内市場で過半のシェアを占めているいろどりビジネスにとって、「ビジネスの拡大」はもう一つの大きな課題である。ただ、商品的に国内需要の大幅な拡大は望みにくい。そこで、もっと大きなビジネスが見込める海外に目を向けているわけだ。

 海外輸出といっても、外国にある現地の料理のお店に“つまもの”を納入するというわけではない。ゆくゆくは「海外の現地料理に日本文化を取り入れる形で使ってもらう」という夢はあるそうだが、一足飛びにそこへ持っていくのは難しい。そこで、
まずは「外国にある日本料理店」を対象とするビジネスを進めている。

 「現在はまだ週に1ケースから2ケース程度の出荷ですが、海外向けを全体の1割程度にまで増やせると、国内の余剰在庫を海外に持っていくことができます。そうすると国内の単価も上がるので、効果としては非常に大きいのです」(大畑氏)。



 また、「ブーメラン効果」も大きいという。欧州に進出する際にはテレビ局が同行取材し、その模様がテレビで放映されるなどした。海外での売り上げはわずかでも、
海外で認められることが国内での売り上げ増加につながる波及効果が得られるという。

 いろどりが海外への輸出に特に力を入れている「わさびの葉」などはまさにその好例だ。

 
「欧州では『お皿の上にある物は全部食べられないといけない』という文化があるようで、『食べられるつまもの』ということでわさびの葉を前面に押し出しています。大葉の代わりに刺身のつまにもできますし、実際にわさびの香りがして食べられるので人気になっています。これが日本のテレビで取り上げられたことによって、国内でもわさびの葉の知名度が上がってきました」(大畑氏)。

 現在は、先述のブーメラン効果も狙ってフランスの日本料理店など、欧州を中心に開拓し始めているという。海外のフードショーなどにも積極的に出展している状況だ。



■きめ細かな情報提供と共有がカギ

 こうした営業活動も、上勝情報ネットワークを通じて約200軒の加盟農家に伝えられる。フランスの日本料理店でどのようにいろどり農家が出荷したつまものが使われているのか、ドイツのフードショーでの反応はどうだったのか…など、国内外の活動報告がほぼ毎日アップされ、情報共有されているとのことだ。

 「『みなさんの商品がどうして売れているのか』をきちんと伝えていかないと、結局単に『自分たちがいい商品を作っているから売れているんだ』となってしまいます。だから、こういう営業活動をして、それがこんなビジネスにつながっていんだといったことをお知らせすることはとても重要です」(大畑氏)。

 「また、税金と一緒で、どう使われているのかを知ってもらうこともとても大事です。出荷した商品がどのように使われているのか、どのようなものが求められているのか。たとえば『フランスにあるミシュランの星付きの料理店でこういう風に使われていた』という情報は誇りにもつながります」。

 国内のつまもの市場は飽和状態になっており、これ以上の伸びは期待できない。
バリバリと働いて、家族や子供を養っていけるような若い後継者を迎え入れ、人口を増やしていくためには、既存の国内市場だけでは心許ない。海外市場の開拓というのはそういう後継者探し・過疎化対策という観点でも急務となっている。



 先ほど「将来的な夢」として、海外の現地料理のお店などにも版図を広げていきたいという野望を紹介したが、同社は決してただの夢としてボンヤリ描いているわけではない。実現のチャンスを虎視眈々と狙っているという。「その
カギを握るのは、やはり流通です」と横石社長は語る。

 「
欧州なら月曜に出したら水曜日に着くようになれば革命が起きると言われています。実際に、運送業者がこれにきちんと対応できるようになったら革命が起きますよ。日本の農家のレベルは大根でもカブでも、何をとっても絶対に海外の農家に負けません。月曜に出荷した鮮度の状態で、きちっと水曜に着くようになり、輸送コストが下がれば需要が一気に広がると確信しています」(横石氏)。

<中略>



 
この話は、“葉っぱ”を扱ういろどりビジネスだけの話ではない。すだちやゆずなど上勝町の特産、徳島県の特産物、さらにはより広域の農産物などをコンスタントに海外に出荷できる体制が整えば、1品あたりの輸送コストが劇的に下がる。

 「
日本の気候条件からできる作物の品質はすごいですよ。あんなにおいしくてきれいな果物は、世界のどの国でも絶対に作れません。でもいつ入荷するかわからない、数がバラバラでは高くなってしまいます。まとまって送れるようになれば流通コストが下がりますから、日本のものは大きく進出していくでしょうね。これは国を挙げて国家プロジェクトとしてやるべきでしょうね。『TPP反対』じゃなくて、どう攻めるかが重要です。勝てるのが分かっているんですから」(横石氏)。



■“葉っぱ”で日本の山を再生させる!

 横石氏の構想は単なる「葉っぱビジネス」の枠にとどまらない。現在精力的に取り組んでいるプロジェクトに「いろどり山構想」がある。いろどり本社のすぐ目の前にある山を手始めとして、
ただ杉の木が植えられたままろくに活用もされていない山を、お金になる葉っぱを生む彩り豊かな木で埋め尽くす「いろどり山」に変えてしまおうという壮大な計画だ。

<中略>



 「誰も活用しない杉の木が生えたままの山を放置したら、確実に負の遺産になっていきます。そこで、杉の木を切って代わりに葉っぱビジネスで使えるさまざまな木を植えようというわけです。花桃や桜、もみじなどを植えて『生きた山を作る』のです。見た目も当然、良くなります。『景観日本一の山』を作り、世界から人を呼びたいと考えています」(横石氏)。



 伐採した杉の木はエネルギー源として、また木の皮を使った工芸品などにも用いる計画だという。

 「葉っぱビジネスを拡大するという狭い話ではなく、林業の後継者を増やすなど『人を育てること』にも結びつけられます」と横石氏は熱く語る。

 日本では今、林業も深刻な高齢化問題と後継者問題を抱えている。「木を切りたくても切れない」という状況だ。伐採してもお金にならないから、そのままにせざるを得ない。ビジネスにならないのであれば、後継者を育成できるはずもない。

 しかし、いろどり山をテストケースにすることで、「実習形式で人を育てることができる」と横石氏は見ている。約5年間かけて、戦後に植えられた杉の木を伐採し、いろどりビジネスに利用できる樹木や美しい花を咲かせる木を植えていく。苗木を植えて育てていく過程をつぶさに体験できれば、林業に関わる人を育て増やしていくことが可能になる。実際に、いろどり山の計画は、着々と進行している。「絵に描いた餅」では決してない。



 さらに横石氏は、現状のいろどりビジネスを超える「より高度なIT活用」についても構想を披露した。

 「いろどり山みたいな山の開発は、今後ドローンを活用してできるようにしたいと考えています。山の上空を飛ばして『この木とこの木を抜いたらどういう姿になるか』といったことをまずシミュレーションする。苗木もドローンに積んで飛ばして植える。そういう時代になっていくでしょう。上勝情報ネットワークのような仕組みや、
将来のドローン活用なども含めて、地方の農林水産業におけるICT活用はこれからの大きな課題だと思います」(横石氏)。



 「ただの葉っぱがお金になる」。今やいろどりビジネスはそんなキャッチフレーズで表現できる範囲を自ら飛び越えていこうとしている。世界中の料理店で上勝町の“つまもの”が料理の飾り付けに使われ、流通革命により上勝産「ゆず」や「すだち」をはじめ、日本の果物や野菜が海外の市場に次々と並んでいく。地元の上勝町では「ただの山」が「いろどり山」に変貌を遂げる――。果たしてそんな「次の奇跡」を起こせるのか。これからの歩みに注目だ。


 葉っぱビジネスの成功要因のひとつは、ITCの活用で、市場のニーズと実績をリアルに結び付け、生産現場のおばあちゃんが使いこなしたことですね。

 「人を動かすツボをつかむこと」が重要で、「自分にとってプラスになるかどうか」をゲーム感覚で普及させたのが成功したのだそうです。それは、多くの諸兄がご存知のことですが、実際に成功させるには、最前線でのご苦労はいかばかりかと推察します。都会の企業の若者でもそう簡単には動かないことは、システム開発経験者ならだれでもが、システム設計で最も苦労されることですね。おばあちゃん達の意欲が、都会の若者以上だったことも大きいと考えます。


 後継者の育成と、事業の成長(売上・利益の増大)とは、ニワトリと卵の関係と同じですね。
 プラスに回転すれば、どんどん成長し、従事する若者も増えます。マイナスに開店すれば、デフレスパイラルとなり、就労者は減ります。日本の、農業、林業、水産業がその典型です。
 「いろどりビジネス」は、攻めのTPP活用で、限界に達している国内需要の壁を越えて、世界の需要を取り込むべく動き始めているのだそうです。カギは、物流。国家プロジェクトで取り組むべきと。大賛成です。小泉進次郎農林部会長に、声が届くことを期待します。


 
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 この花の名前は、ヘリオプシス 姫ヒマワリ


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Fotolia

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by yuji_oga | 2015-12-28 02:31 | 企業改革 | Trackback
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