人工減と経済成長減 イノベーションで連動は阻止できるのか

 日本が抱える人口減と高齢化の進行。すでに深刻な問題を生み出しているが、必要以上に悲観的にとらえられている面がある。先進国の経済成長は、人口増よりもイノベーションで起きている。
 長い目でみれば、人手不足は必ず省力化への投資を促進し、省力化投資は、人手不足の問題を解決するだけでなく、1人当たりの所得の上昇をもたらす。イノベーションによる生産性の向上があれば、悲観する必要はないと唱えるのは、立正大学の吉川教授。
 良く聴く話ですが、どうなのでしょう。




 
人口減と経済 イノベーション 成長の源 吉川洋 立正大学教授 (5/21 読売 地球を読む)

 日本の人口が減っていく。4月10日に国立社会保障・人口問題研究所が公表した新しい将来推計人口では、出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)が1.44と5年前の推計時に比べて少し回復したため、人口減少のペースはやや緩やかになった。とはいえ、新しい推計でも2065年に日本の人口は8800万人、約100年後の2115年には5055万人まで減少してしまう。
 この間に高齢化も進む。
現在、65歳以上の高齢者が総人口に占める比率は28%だが、40年後には38%に上昇する。
 
人口減少は、日本経済や私たちの暮らしにどのような影響を与えるのだろうか人口減少と高齢化は、すでに深刻な問題を生み出している。
 年金も医療も、
社会保障は現役世代から高齢者への所得移転だ。少子化で現役世代が減る一方、高齢者が増えれば、制度の維持は苦しくなる
 現状では、
社会保障の給付総額118兆円のうち、保険料で約6割しか賄えていない。残りの約4割は国と地方自治体による公費だが、税収は十分ではない。これが、財政赤字を拡大させている。
 人口減少と少子高齢化は、地域の経済社会も直撃する。「地方消滅」という言葉すら生まれた。この二つの問題は、21世紀の日本にとって最大の課題と言ってもよい。
 しかし
一方で、人口減少が必要以上に悲観的にとらえられている面もある。「人口、とりわけ現役世代が減っていくのだから、日本経済は良くてゼロ成長、素直に考えればマイナス成長しか望めない」と感じている人が多いようだ。「右肩下がりの経済」というフレーズもよく耳にする。
 こうした考えの人は、一人ひとりがシャベルを1本ずつ持って仕事をしているイメージを頭の中に描いているに違いない。100人でやっていたのに、人口が減って70人になれば仕事の量、すなわち作り出すモノやサービスの量は減らざるを得ない。
 しかし、
これは先進国の経済成長のイメージとしては、まったく誤ったものである。1本1本のシャベルに代わってブルドーザーが登場する、と言えば分かってもらえるだろうか。
 その結果、
生産性が向上し、「1人当たりの所得」が上昇していく。先進国の経済成長では、1人当たりの所得の上昇こそが重要なのだ。
 1964年に東京オリンピックが開催された高度成長の時代、15年間ほど日本経済は年平均で10%成長した。このことはよく知られている。知られていないのは当時の人口動態だ。

「省力化投資」人手を補う

 高度成長時代に、日本の人口はまだ増加していたが、伸び率は年平均で1%。働いている人、つまり労働力人口の伸び率でみても年1.3%ほどだった。
 高度成長というと、中学を出たばかりの「金の卵」と呼ばれた若者たちが、上野駅に到着するシーンが思い出される。ホームにあふれんばかりの15歳の少年少女たちの姿を見ると、当時は現役世代の人口が、すごい勢いで増えていたかのように錯覚しがちだ。
 しかし、集団就職は、人口が増加していたことを示すものではない。人々が移動しただけだ。
 労働力人口が年1.3%ほどしか増えないのに、この時代は労働生産性、あるいは1人当たりの所得は毎年9%ずつ伸びた。労働生産性の上昇をもたらすものは、いつの時代もイノベーション(革新)、つまり新しい事への挑戦である。
 
先進国の経済成長は、人口増よりもイノベーションで起きているといっても、現実はどうか。人口が減る中で、日本経済は人手不足が大問題になっているではないか。こう感じる人も多いだろう。
 1人の求職者に対し、何人の求人数があるかを示す
有効求人倍率は今や1.4を超え、バブル期のピークの水準に達した。歴史的な売り手市場の中、宅配便、宿泊、飲食業や事業所向けサービス業など幅広い分野で、人手不足が企業活動の足かせとなりつつある
 ただ、人手不足については、目の前の問題と中長期的な影響をはっきり区別する必要がある。個々の職種についてみれば、人手不足は確かに現実のものだ。例えば、建設業の有効求人倍率は3.6倍で、飲食などのサービス業も3倍に達している。
 一方、少し
長い目でみれば、人手不足は必ず省力化への投資を促進していく。資本主義経済の2OO年の歴史は、「人余り経済」から「人手不足経済」への転換の歴史だったと言うことすらできる。
 
省力化の動きは、すでに始まっている。大手コンビニエンスストア5社は、2025年までに全店の商品にICタグを取り付けると発表した。来店客が自分で会計を済ませる「セルフレジ」の導入につながる。宅配サービスでは、不在時の再配達をなくす宅配ボックスの普及が始まっており、宅配ボックスの生産はフル回転だ。
 こうした様々な形の
省力化投資は、人手不足の問題を解決するだけでなく、1人当たりの所得の上昇をもたらしてくれる。
 一口に
人手不足といっても、実は「現在の賃金のもとでの人手不足」にすぎない。賃金を十分に上げれば、人は集まるようになるなぜ賃金を上げないかと聞かれれば、作り出したモノやサービスの価格を上げられないからだ、と企業は答えるに違いない。そこにも問題がある。
 大手宅配会社が、当日配送サービスを縮小する方針を打ち出して話題になっている。当日配送という特別なサービスから、なぜ付加価値を引き出せないのか。
モノやサービスの内容に見合った対価を得ていくことも生産性向上の一つであり、人手不足時代の大きな課題といえる。
 1人当たりの所得を向上させる源泉はイノベーションであり、その主たる担い手は現役世代だ。
現役世代が大きく減るのだから、やはり日本は苦しいと危惧する人は多いだろう。
 日本の生産年齢人口(15~64歳)は7700万人だが、半世紀後の2065年には4500万人まで減る。これは現在のドイツよりは少ないものの、英国やフランスよりは多い。
 生産年齢人口の減少で、イノベーションが不可能になるなら、英国やフランスは、現時点ですでにできないことになる。しかし、どの国もイノベーションを諦めていない。
 
将来への過度な悲観は避け、あくまでイノベーションによる生産性の向上を目指すべきだ。同時に、人口減少の悪影響を和らげるため、財政・社会保障制度の改革にも正面から取り組む必要がある。


 シャベルを1本ずつ持って仕事をしているところへブルドーザーを投入する例えでイノベーションの説明をしておられます。また、世間では、人工知能(AI)の発達で人間の職場が奪われるとして、人口減による労働人口減というより、AIによって人間の職が奪われるという論説が姦しくなってきています。

 仕事が働き甲斐があるもので、奪われると云々という話は重要なのですが、話を分かりやすくするため、ここでは仕事=所得手段と割り切って話をすすめています。
 人口減があって労働人口が減っても、イノベーションで、所得が増えるとの吉川教授の論。
 イノベーションは人口減対策として行われるのではなく、企業活動の利益追求が目的で行われているので、人口動向と直接のインカ関係はありません。バブル期の人口動向と経済や所得の話題に触れておられるところでもあります。

 全体の論理として、異議は有りませんが、抜けている肝心なことがあります。需要動向と仕事の関連が、需要は一定のものとしての前提なのか、抜け落ちています。
 物でもサービスでも、需要が在るから仕事が産まれ、需要の変動があるから仕事の変動があり、仕事(求人)の変動と労働人口の供給量との関係で所得が変動するのです。
 物やサービスの需要変動は、それを求める人口の多寡が要因のひとつです。
 つまり、人口減少は、需要の減少に繋がるのです。AIのイノベーションによる人の労働需要の減少と、人口減のカーブがどう相関するのか。人口減で物やサービスの需要が減る。なので求人需要が減る。その減少カーブより労働人口減の減少カーブがゆるければ所得は減るし、人口減のほうが多ければ、所得は増えます。
 しかし肝心なことは、減少過程(デフレスパイラル)での点をみた話で、中長期に観れば、経済は縮小に向かうのですから、小さくなるパイの中での話にすぎません。

 また、日本の人口の老齢化=逆ピラミッド現象については、日本経済の需要をリードしてきたベビーブーム世代が、20~30年後には平均寿命に達し、いなくなることを考慮に入れた展望の検討が必要です。今後の、20~30年間の老齢化対策と、その後の対策とは異なってくるので、それぞれ異なった対策が必要ということです。その話は別の機会に譲ります。

 人口と経済は、イノベーションも絡みますが、無視はできない因果関係はあり、人口減=少子化対策は国家の維持には欠かせない重要政策だと考えます。


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 この花の名前は、タンポポ

写真素材のピクスタ

Fotolia 

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by yuji_oga | 2017-05-22 03:45 | 人口減少 | Trackback
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