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大量のドローンの群れで、潜水艦の無力化が可能になる

 戦闘の形態は、技術の進化に伴い変遷してきました。
 世界最強のロシア艦隊に、日本海海戦で勝利した日本軍は、「ランチェスター戦略」によるものだったのですが、「戦艦重視」の凝り固まった考えに陥った日本軍。大艦・巨砲戦略に走り、「大和」「武蔵」を建造して太平洋戦争に臨みましたが、航空機の発展で(日本も優秀なゼロ戦を造りましたが)、米空母船団より海軍はミッドウェー海戦で殲滅させられ、「大和」「武蔵」は戦果を挙げることはありませんでした。
 今、世界最強の米軍。ハワイに指令本部をおく海軍が、世界を制覇しています。

 北朝鮮の核とミサイルの暴走を阻止すべく、国連の経済制裁に加え、空母3船団を派遣し圧力もかけています。

 しかし、中国は、AD/A2戦略で、深海のある南シナ海で勇躍する原潜から発する空母を狙うミサイルを有し、第一列島線、第二列島線といった防衛ライン内での米空母船団の活動を牽制していることは、諸兄がご承知の通りです。

 貧しい小国の北朝鮮が、世界一の軍事国家と渡り合えるのは、核とミサイルがあればこそですね。

 大艦・巨砲時代から、航空機・空母船団の時代に変わり、更にミサイル・宇宙空間の時代へと変わろうとしています。
 そこで大きな役堀を締めているのが、探索しづらい深海からミサイルを発射する潜水艦。長時間潜航可能な原子力潜水艦が主流ですが、ステルス性(静音性)では日本の「そうりゅう型」が軍を抜いていて、世界から注目されているのは、衆知のことですね。
 価格が高く、オーストラリア軍の導入検討では、不採用になりましたが。

 ところが、これらのミサイル戦で重要な役割を果たす潜水艦も、ドローン軍団(群れ)によって無力化される時代が来るのだと。。
 



 
 潜水艦の時代は終わる? 英国議会報告書が警告大量のドローンから潜水艦は逃げられない 2017.11.18(土) 部谷 直亮

 質・量ともに圧倒的な中国の軍拡と、自衛隊の予算・人員の無駄遣いによって、日本の対中軍事優位性が日々減少している。そうした中、残された数少ない対中優位性の1つが日本の潜水艦戦力である。中国は対潜水艦作戦能力が低く、一方、日本の潜水艦は静粛性が高いので、日本がこの点では有利というわけだ。

 しかし、
英国のシンクタンクが議会の要請に応じて作成した報告書によれば、小型偵察ドローンが潜水艦の優位性である「ステルス性」を無力化していく可能性が出てきているという。今回はその内容を紹介しつつ、意味するところを論じたい。

■何千もの無人機が潜水艦を探索

 2016年3月、英国の英米安全保障情報会議(BASIC)は、科学ジャーナリスト、デイビッド・ハンブリング氏による
「対潜戦における無人兵器システムの網」と題する報告書を発表した。報告書の作成を求めたのは英国議会である。英国が潜水艦型核ミサイルシステムを維持すべきかどうかを検討する材料として用いるためだった。

 ハンブリング氏の報告書の概要は、以下の通りである。
 
これまでの「対潜水艦戦」(以下、ASW)は、少数の艦艇および有人機によって実行されていた。これらの仕事は、広大な荒野で逃亡者を探す少人数の警察のようなものだった。最も可能性の高い逃走ルートや隠れ家に戦力を集中させて、幸運を祈るだけであった。

 
しかし、安価な無人機の登場によって、逃亡者の逃走は不可能になる。一人ひとりの探知能力は低いものの何千人もの応援が警察の側につき、隅から隅まで全域を探索するようになるからだ。

 小型偵察ドローンが米軍を中心に増加している。精密攻撃が可能な小型無人機もイスラエルなどで登場してきている。
 しかも
最近の米国防総省は、大量の小型ドローンを「群れ」として使う研究を進めている。例えば、米海軍は「コヨーテ小型偵察無人機」というASW対応の小型無人機を開発した。コヨーテ小型偵察無人機は哨戒機から投下されるや飛行形態に変形し、熱センサーで水温を測定し、風速・圧力などの様々なデータを収集可能する。

 
そもそも偵察機を飛ばす必要はなくなるかもしれない。米海軍が開発した小型水上無人機「フリマ―」は、今までASWの主力であったソノブイ(対潜水艦用音響捜索機器)の代替になる可能性がある。

 また、やはり
米海軍が開発した「セイル・ア・プレーン」は、飛行機であると同時に偵察時は水上で帆を使って帆走し、太陽発電と波力発電で充電できる偵察機である。

 水
中グライダー式の小型無人機もある(水中グライダーは推進機を持たず、浮力を調整することで水中を上下しながら移動する)。大阪大学の有馬正和教授が開発した「ALEX」は低コストの水中グライダーである。有馬教授は、1000ものALEXのような無人機の群れで構成される巨大な共同ネットワークで海洋研究調査を行うことを提唱している。

 なお、現在、水中グライダー研究でもっとも重要な国は中国である。
中国は世界初の水中無人グライダー「シーウィング」を瀋陽研究所で開発している。また天津大学のプロジェクトでは、リチウム電池により年単位で稼働するとされる水中グライダーを開発した。西安工科大学も、波力発電で稼働する水中グライダーの開発に成功している。

 しかも問題なのは、近年は水中センサーの発達が目覚ましく、
小型無人機がソナー、磁気探知、熱センサー、光センサー、レーザー探知装置など、あらゆるセンサーを搭載できるようになったことである。しかも、米中が開発しているタイプはいずれも何時間、何日も行動可能だからである。

 現在の「コヨーテ小型偵察無人機」の稼働時間は90分だが、燃料電池技術の進捗によりこれは近い将来に5倍になるだろうし、そのほかの技術は無限に小型無人機の飛行時間を延ばすだろう。例えば
いくつかの小型ドローンは既に太陽発電や波力発電機能を備えており、80時間以上の飛行に成功したタイプもある。これは昼夜連続で飛行できるということである。また、海鳥が何千時間も連続飛行するメカニズムを応用し、風速を利用した研究も進んでいる。

■きわめて遅れている日本のドローン対策

 以上のハンブリング氏の論考は一体なにを意味しているのだろうか。
 それは、「National Interest」誌のマイケル・ペック氏が指摘するように、
「高コストで壊れやすい潜水艦」と「低コストな小型無人機の群れ」という兵器システム間における争いが起こりつつあるということだ。
 
この争いで、潜水艦が優位性を保つのは難しい。例えば、ヴァージニア級攻撃型原潜の価格は30億ドル(約3386億円)だが、小型無人機は5000ドル(約56万円)、30機の群れでも15万ドル(約1680万円)にすぎない。しかも、ヴァージニア級潜水艦は撃沈させられると乗員134名の被害が出るが、小型無人機は何機叩き落されても人的損失は出ない。どう見ても、中長期的に潜水艦システムが費用対効果で不利なのは間違いない。

 そして、
これは我が国にとっても深刻な影響をもたらす海上自衛隊の潜水艦が中国のドローンに追い回され、攻撃される日が来るかもしれない、ということだ。
 海自が誇るそうりゅう型潜水艦の11番艦は643億円を予定している。仮に中国が50万円程度の小型ドローンを10万機投入しても十分に元は取れる。いかにそうりゅう型の静粛性が世界最高峰であっても、何百機、何千機もの最新鋭の多種多様なセンサーを搭載した小型ドローンの下で行動の自由が担保されるとは思えない。

 
ドローンが攻撃するのは潜水艦だけではない。将来、長時間飛行が可能な何千機もの中国の小型自爆ドローンが日本に襲来することもありうる。その際は、F-35も、いずもも、イージスアショアもイージス艦も、戦わずして無力化されてしまうだろう。
 何よりも、中国はドローンの世界シェア1位のDJIを擁するドローン大国である。今年6月には119機ものドローンを同時に運用することに成功し、世界記録を作っている。

 一方、小型ドローンやセンサー、3Dプリンタ技術などに関する研究はきわめて遅れている(先日、筆者とプレジデント誌の問い合わせに対し、
防衛省は「小型ドローンを撃墜可能な装備はない」と正式に認めた)。日本に残された対中軍事優位性を確保するためにも、そうした関連技術の研究推進はもちろんのこと、小型ドローンの群れを安価に破壊するイノベーションを起こさなければならない。「近い将来」が「今現在」になる、その前に。

 尖閣諸島の日本の領海内に入っている中国艦船から、ドローンが発進されたのを受けて、航空自衛隊機がスクランブル対応を行うという出来事がありました。尖閣上空からの撮影を行っているのですね。
 ドローンの先進国・中国では、軍隊でのドローンの活用が進んでいるのだそうです。
 中国国営放送で尖閣のドローン映像放送 5月の領空侵犯、世論形成が狙いか(1/2ページ) - 産経ニュース

 「高コストの潜水艦」と「低コストな小型無人機の群れ」という兵器システム間における争いが起こりつつあり、この争いで、潜水艦が優位性を保つのは難しくなってきていると。
 そして、これは我が国にとっても深刻な影響をもたらす。海上自衛隊の潜水艦が中国のドローンに追い回され、攻撃される日が来るかもしれないとも。
 いかに「そうりゅう型」の静粛性が世界最高峰であっても、何百機、何千機もの最新鋭の多種多様なセンサーを搭載した小型ドローンの群れの下で、自由に行動できるかは危うくなる。

 ドローンの飛行に対し、F-35がスクランブルしなければならない事自体、新たな技術への対応が遅れている証しですね。軍備ではなくても、日常生活の中でのドローンの墜落も散見されるようになってきています。こうした、違法飛行のドローン捕獲のニーズも高まってきます。

 「そうりゅう型」の先端技術が、安価な新技術に駆逐されかねない。その新技術に勝てる新技術が必要。技術競争に終わりはないのですね。

 技術立国として世界をリードしてきた日本。このところ日本を代表する製造業企業の不祥事がつづいていますが、是非、新技術の創造力を取り戻していただきたい。


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by yuji_oga | 2017-11-20 04:44 | 気になる話
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