温暖化はすでに、世界中の自然と社会に影響を与えている

 国連「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第2作業部会の報告がまとまりましたが、6年前の「地域によって温暖化の影響が出始めている」という内容から、「温暖化はすでに、世界中の自然と社会に影響を与えている」に変わり、事態の悪化を訴えるものです。
 
気候変動報告 影響はもう世界中に及んでいる (4/8 読売社説)

 有効な対策を講じなければ、地球は今世紀末までに様々な危機に直面する。

 科学者たちが温暖化について評価した国連「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第2作業部会の報告がまとまった。

 先に報告書を公表した第1作業部会は気候の変化そのものを分析したが、第2部会はおもに、温暖化が自然や社会・経済に及ぼす影響を検討している。

 6年前の報告は、「地域によって温暖化の影響が出始めている」と警告した。それが、今回は「温暖化はすでに、世界中の自然と社会に影響を与えている」に変わった。

 将来はどうか。今後、何の対策も講じられなければ、約1度の気温上昇で、深刻な水不足に直面する人が、今より数億人増える、とされた。

 仮に、世界の平均気温が1・5~2・5度上昇すれば、生物種の20~30%が絶滅する危険が高まる。地球上のほとんどの珊瑚(さんご)礁が白化し、死滅寸前となる。2度以上になれば、洪水の被害者も沿岸域で毎年数百万人ずつ増えるという。

 IPCCは今回初めて、全地球での平均気温の上昇幅について"許容レベル"を明記したのだそうです。(4/7 読売朝刊)
 1990年レベルから約2~3度未満であれば、農作物がよく育ち、冬場の暖房費が安く済むなどの便益をもたらすが、「それ以上の場合は、すべての地域で便益の減少かコストの増加が生じ得る」というものです。
 EUが、「2度」の目標を持ち出したのに対し、日本は中国や米国を含んだ削減の枠組みを作ることや、産業界の抵抗への配慮から、高い目標に同調するのは得策ではないとし、現段階での議論には反対したのだそうですが、EUの提示より緩い数値ながら明記されました。
 各国代表が、数値を盛り込むことで合意したことは、全世界が気温上昇幅との関連で長期目標を共有し、CO2削減に取り組む体制造りが国際交渉レベルで進展すると期待されるとのことです。

 日本に生じている影響のひとつに、九州の 4年連続の米の不作があるのだそうです。
 
暮らしに異変の足音 「まるで亜熱帯」嘆く農家 (4/7 読売朝刊)

 「九州は亜熱帯になってきよるじゃないですか」
 長崎県の米どころ諫早市。春には水田に変わる二毛作の野菜畑を見つめ、兼業農家の古賀昭三さん(51)はつぶやいた。「米ではもう食べてはいけん」
 九州は 4年連続で、米の不作に見舞われている。1等米より60キロあたり1,000~2,000円安い 2,3等米が増え、市内の収穫量は昨年、平年の半分以下に落ち込んだ。

 原因は米が熟する 8月末~9月初めの暑さ。
 県総合農林試験場の古賀潤弥主任研究員によると、主力品種「ヒノヒカリ」は、26.5度を超えると、1等米の収穫は絶望的だが、ここ数年、その水準を超える年が珍しくなくなった。

 この日採択された報告書は「気温上昇や降雨量の変化が農作物の生産性を低下させ、アジアでは食糧不足が深刻化する」と警告した。日本でも、温暖な西日本を中心に、最大40%の米の収穫減少が予測されている。
 

 畜産や魚養殖の餌に欠かせない南米沖のカタクチイワシ、豪州や北米の穀倉地帯の水不足など、食料を輸入に頼る日本には世界中で生じている温暖化の影響が、輸入価格の高騰というかたちで反映され、国内の畜産や魚養殖産業へも連鎖を生じます。
 報告書によると、「気温が1.5~2.5度上がると、20~30%の生物種が絶滅する可能性がある」。 1度上昇するだけで、生物の被害は甚大なものになるとしています。
 
 ある特定の種が絶滅すれば、これをエサにする動物、さらにその動物をたべる大型哺乳類なども連鎖的に絶滅への道をたどる。森林火災の増加による自然の回復力の喪失などとあわせ、最終的に生態系そのものが崩壊、回復出来なくなるとの懸念も報告書は指摘しています。

 IPCCのパチャウリ議長は、「気候変動の影響を最も強く受けるのは貧しい人々だ。気候変動と貧困問題と関連づけて考える必用がある」と警告しています。
 温家宝首相の来日の共同声明に、中国がポスト京都議定書交渉への積極参加の方針が盛り込まれ、日本の省エネ・環境対応技術の導入に取り組むとのことです。アフリカからの資源獲得に熱心で、資金援助を行っている中国ですが、大国になった証として、地球規模の視野での積極参加は、歓迎ですし、米国と並ぶCO2多量排出国がくわわることで、効果も期待できます。

 
気温上昇(1990年比)による生態系への影響 (4/7 読売朝刊)

■ 1度 地球全体への影響
  林地ツンドラの47%、寒帯の針葉樹林の23%、低木地の21%、草原(ステップ)の15%、サバンナの14%、ツンドラ地帯の13%、温帯の落葉樹林の12%が消える

■ 1.6度 アフリカへの影響
  141国立公園の中の277哺乳類のうち、8~12%が絶滅の危機

■ 1.8度 地球全体への影響
  主要165河川のうち 63河川で、10%以下の魚種が消える

■ 1.9度以上 地球全体への影響
  陸地の生態系の酸素吸収が飽和状態になり、排出源へと転換

■ 1.9度 南米への影響
  アマゾンの熱帯雨林、生物種が広範囲に消える

■ 2.3度 北極圏への影響
  北域の森林限界の緯度が西ヨーロッパで0.5度、アラスカで1.5度、グリーンランドで 4度北に移動する。

 豪州への影響
  21~30%のチョウが絶滅

■ 2.8度 地球全体への影響
  6~22%の沿岸湿地が消滅。米国、地中海などで渡り鳥の生息域に大きな被害

■ 3.1度 地球全体への影響
  林地ツンドラの68%、寒帯の針葉樹林の44%、低木地の34%、草原(ステップ)の28%、サバンナの27%、ツンドラ地帯の38%、温帯の落葉樹林の26%が消滅

■ 3.4度以上 豪州への影響
  ユーカリの73%が生息限界を超える



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by yuji_oga | 2007-04-08 18:48 | 地球温暖化 | Trackback
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