「移民鎖国」から「人材開国」へ

 世界同時不況が進行中ですが、日本経済を長中期的に展望すると、内需の面からも労働力の面からも、人口減少への対策が必要なことは、周知の命題です。
 対策のひとつに、外国人政策があり、20年ぶりの出入国管理法などの改正案作成の検討が進められているのだそうです。

 
人材開国を考える 50年後を見据えて「外国人政策」を (11/23 日経社説)

 外国人労働者受け入れが加速したのは1990年代初めだった。途上国の人材育成に貢献することを目指した研修・技能実習制度が本格的に動きだし、一方でブラジルなどの日系人についてはほぼ無制限で受け入れる制度が始まった。
 その結果、増え続けていた不法就労・不法滞在は徐々に下火になってきた。だが、これまでも繰り返し指摘してきたように、現行の制度も様々な問題をはらんでいる。

ほぼ20年ぶりの大改革

 1つは研修・技能実習制度が単純労働力を低賃金で受け入れる裏道として利用されていることだ。「途上国の人材育成」という制度の理念と実際に制度を利用する企業などのニーズがかけ離れているのである。
 結果として、多くの研修・技能実習生が実態は労働者なのに労働者として当然の法的な保護を受けられない状況に陥っている。最低賃金を下回る給与しか払わなかったり、パスポートを押収したりする人権侵害や法令違反が各地で頻発している。

 政府は、2009年に出入国管理法などの改正案を提出することを目指して改革案の検討を進めている。ほぼ20年ぶりの大改革となる。ただ、厚生労働省や経済産業省がたたき台として示してきた案をみる限り、雇用者への監督強化や違反に対する罰則強化など、小手先の改革案にとどまっている印象が強い。
 厚労省や経産省の案のように「単純労働力は受け入れない」という建前を前提にして考えると抜本改革の展望は開けない。「人手不足を外国人労働者で補う必要がある」と正直に認めたうえで、新たな受け入れ制度を考えるべきだ。多くの国が採用しているような、期間3年程度の就労ビサ(入国査証)を発給する短期就労制度は参考になるはずだ。

 日系人の増加で問題となっているのは外国人を受け入れる環境・基盤の不備である。たとえば、日本語教育のシステムやカリキュラムを国として整える努力を怠ってきた。また、転居する際に市町村へ転出・転入届を出すことを外国人には義務づけていないため、自治体は外国人の居住実態を把握するのが難しい。
 こうしたインフラの不備は、帰国した中国残留孤児などにとっても大問題だ。総合的・体系的に取り組むことが不可欠で、省庁縦割り的な対応では限界がある。

 日本経済団体連合会は10月に発表した提言の中で、外国からの人材受け入れを担当する閣僚の設置と関係省庁が一体となって取り組む体制の整備を訴えている。
 経団連の提言は長期的な観点から「日本型移民政策」の検討も求めている。根底にあるのは、今後50年間で人口が4000万人近く減り特に生産年齢人口はほぼ半減する見通しであることへの強い危機感だ。
 さらに、消費や住宅投資などの内需の縮小も加わって経済は活力を失い、膨大な負債を抱えた財政や年金は維持しにくくなる。医療・介護や教育、治安・防災といった経済社会インフラが揺らぐ……。
 提言が展望する50年後の日本の姿はかなり悲惨であり、日本の経済社会の活力を維持するため相当規模の移民を受け入れるべきだとの議論にはそれなりに説得力がある。


 自民党の外国人材交流議員連盟が6月にまとめた提言はさらに踏み込んで「今後50年で1000万人の移民を受け入れよう」と訴えた。

足元の課題を踏まえて

 一方、日本経済調査協議会が9月に出した提言は、外国人労働力を大量に受け入れた欧州諸国で社会問題が発生しているのを踏まえ、移民の受け入れには慎重だ。工場労働者など高度ではない働き手は単身赴任とし、能力開発の程度に応じて1―5年で帰国してもらうのを基本とする。そのなかで特に能力を高めた人は「高度人材」と認定して定住を前提にした就労を認める――といったアイデアを示している。

 言うまでもなく、人口減・労働人口減対策としてまず必要なのは少子化を食い止め出産を増やすための努力や女性の社会進出の応援である。現状程度の外国人の受け入れでさえ問題が頻発しているのが実情で、大規模な外国人の受け入れや定住を前提とした移民の本格的な受け入れは社会に深刻な摩擦をもたらしかねない。慎重な議論が求められる。

 とはいえ、日本語教育などの体制整備や外国人向けの住民台帳制度の創設など、足元の課題に対応していくことは今後、多くの外国人材に頼らざるを得なくなったときのためのインフラを整えることにもなる。

 どの程度の規模の外国人労働者をどのような形で受け入れるのか。50年後を見据えた「外国人政策」を包括的に検討するときである。


 自民党の外国人材交流議員連盟が6月にまとめた提言は、日本型移民政策の骨格として以下の5項目で構成されています。
  1.日本人口の10%を移民が占める「移民国家」へ
  2.「育成型」移民政策を推進する
  3.日本型移民政策の基盤整備
  4.社会統合・多民族共生のための施策
  5.人道的配慮を要する移民の受け入れ

 移民対象は、①高度人材(大学卒業レベル) ②熟練労働者(日本で職業訓練を受けた人材) ③留学生 ④移民の家族(家族統合の権利保障) ⑤人道的配慮を要する移民(難民、日本人妻等北朝鮮帰国者、その他日本が人道上受け入れを考慮すべき人々) ⑥投資移民(富裕層) を想定しています。

 そして、『日本民族と他の民族がお互いの立場を尊重し合って生きる社会、すなわち「多民族共生社会」を作るという日本人の覚悟が求められる。
 そのとき日本人に求められるのは、自らの民族的アイデンティティを確認し、かつ異なる民族すべてを対等の存在と認める心構えを持つことである。』
とし、『日本人の青少年に正しい外国人観を持たせるため、小中学校で多民族共生教育を実施する。 成人に対しては、外国人との共生を推進するための生涯学習の場を提供する。』ことを提案しています。
 この民族意識の改革の項は、グローバル化への対応といった趣旨としてわからないことはないのですが、長い時間での国民のコンセンサスの中ではぐくまれるべきものと考えます。

 この「日本型移民」政策を、経団連が、外国からの人材受け入れを担当する閣僚の設置と関係省庁が一体となって取り組む体制の整備を訴えるとともに、検討を求めているのです。
 労働力や内需の減衰と、国の財政や年金、医療などの社会インフラへの危機感を強めているのです。

 危機感は、まったく同感です。50年という歳月も(私はそのころは生きていないにしても)矢のごとく到来します。
 人口減の最先端国として、世界の各国の失敗や成功例に学びつつも、新たな政策の導入実行には、かつての高度経済成長の再来は望むべくもなく、中小国として均衡を保つにしろ、悠長なことは言っていられません。
 が、あせって間違いを犯して、取り返しのつかない信用失墜や、政策展望の障害を作ったり、国の崩壊を招く政策を実行することへの慎重な熟慮は欠かしてなりません。
 たとえば、農村や零細企業で行われている研修・技能実習制度の実態の改修。インドネシアおよびフィリピンと締結した経済連携協定等のもとで開始された、看護・介護分野の外国人材の受け入れに、「日本型移民政策提案」で付与されている、「国家試験に不合格になった者が引き続き日本で働くことができる制度」の確立。そして今話題沸騰の「国籍法改正案」の国会審議。
 移民の弊害と、その対策にこれまで多くの議論がなされ、開国に躊躇を続けてきている現状の中で、今国会で衆議院を通過し、参議院で審議中の「国籍法改正案」では、未成年者を自分のこどもだと、国籍所有者が何の証拠もなくても、認知さえすれば国籍が取得できてしまうという法律です。ここでは詳しく触れませんが、国会議員も法律の内容をよく理解できておらず、衆議院では通過後に気づいた議員が騒ぎ始めている状況です。参議院では、審議時間延長をすることにはなったようですが、DNA鑑定などの修正がなされるか予断を許さない状況です。

 50年後の人口(9,000万人 → 6,000 or 5,000万人)の事実を直視すれば、鎖国から人材開国への改革は避けられないと考えます。
 多くの障害を乗り越えて実現するか、世界に先駆ける日本の知恵の発揮のしどころです。


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by yuji_oga | 2008-11-24 17:41 | 人口減少 | Trackback
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