米ビッグスリーの生きる道

 米ビッグスリーの存続に、世界が注目しています。倒産による影響の大きさからも、国の威信の面からも、新オバマ政権もつぶさない方針です。それにしても3社の経営者の無策ぶりは、議会の追及の中継放送をみるまでもなく、米国民から指摘されてしかるべきでしょう。

 
「トラック」に笑い,「トラック」に泣くビッグスリー - 材料で勝つ - Tech-On!

<前略>
 トラック系は,フレームの上にボディを載せるボディ・オン・フレームを採用している。米国メーカーは,「T型フォード」の時代から「アメ車」と言われる大型セダン,さらにはピックアップトラックと一貫して,トラック系のボディ構造を採用してきた。それに対して,日本はビックスリーにクルマづくりの基本を学んだものの,戦後に航空機のエンジニアが自動車産業に移ったこともあり,航空機のボディ構造に近い一体型のモノコック型のボディ構造を採用した(藤本隆宏氏,「自動車の設計思想と製品開発能力」)。それはまた,市場において顧客が,トラックについてはボディ・オン・フレームから生み出される製品としての特徴やイメージを,小型乗用車についてはモノコック構造からのそれを受け入れたからである。

 そして重要なのは,藤本氏らが提唱しているアーキテクチャの理論から見ると,ボディ・オン・フレーム構造を持つトラック系は標準化された汎用部品を組み立てることによってつくる「オープン・モジュラー型(組み合わせ型)」に近いということである。一方,小型乗用車については,専用設計された各部品を微妙な調整をしながら組み上げる「クローズド・インテグラル型(擦り合わせ型)」に近い。

 米国は移民国家であり,移民を即戦力として使わなければならないという歴史的な事情からオープン・モジュラー型に向いた組織としての能力(ものづくり組織能力)が醸成された。この能力はトラックと相性が良かったために,米国ではトラック系に比較優位を持つに至った。これに対して,日本では戦後の人・モノ・金がない状況下でクローズド・インテグラル型に向いたチームワークや多能工としての組織能力が醸成され,これがモノコック構造の小型乗用車と相性が良かったために日本は小型乗用車に比較優位を持っている---というのが(筆者が理解する)藤本氏らのアーキテクチャ論のあらましである。

 つまり,トラックなどのオープン・モジュラー型の製品に強みを持つ米国メーカーが,対極にあるクローズド・インテグラル色の強い小型乗用車を造ろうとしても,相性が悪いためにハンディがあったということになる。90年代にリーン生産などで何とかいいところまでキャッチアップしたものの,一方でトラックで大儲けできてしまったために,小型乗用車向けの組織能力の構築には身が入らなかったということだ。


 日本の自動車メーカーと、ビッグスリーとの優位差は、標準化された汎用部品でのボディ・オン・フレームの「オープン・モジュラー型(組み合わせ型)」生産方式か、各部品を微妙な調整をしながら組み上げるモノコック構造の「クローズド・インテグラル型(擦り合わせ型)」生産方式かの違いが決定付けているというのです。
 環境を考えた燃費指向に、景気の低迷による小型車へのシフトが拍車をかけ、汎用生産のトラック型生産ではなく、細かな技術対応を必要とする小型車生産技術を持つ日本メーカーが生き延びて、汎用生産方式に甘んじたビッグスリーが需要の変化に追随できていないのです。

 それでは、ビッグスリーの生き残る道はないのでしょうか?
 
「トラック」に笑い,「トラック」に泣くビッグスリー - 材料で勝つ - Tech-On!

<前略>
 今後ますます大型車から小型車にシフトしていく傾向が見える中で,米国メーカーが生き残る道はあるのだろうか。今から再び日本メーカーに能力面で追いつこうとする選択肢はあるだろうが,現状の構造が続く限り,相性の面で相当厳しいものがある。やはり考えられるのは,小型乗用車のアーキテクチャが,得意なオープン・モジュラー型になるのを待つか,その方向に誘導するという戦略であろう。

 まず現状と同じ,パワートレーンが内燃機関の小型乗用車のアーキテクチャが変わる可能性について見てみよう。その際に,参考になるのは中国の自動車産業である。中国では,本来クローズド・インテグラル型の小型乗用車のアーキテクチャを無理やりオープン・モジュラー化しているという状況がある。「無理やり」というのは,もともと互換性がないものを,無理やり互換性があるように見せかけている,ということで,品質面では問題の多いものになる。

<中略>
 中国以外のところで波が起こるとすればその可能性がもっとも高いのがオープン・モジュラーの「総本山」である米国だ。しかし,筆者はそのシナリオ展開の可能性は低いのではないかと思っている。一つは,内燃機関を持つ小型乗用車は古い歴史を持っているものの,依然として技術革新が続いているという事情があるからだ。技術革新の内容をクルマに盛り込むにはどうしても専用部品を作らざるを得ないから必然的にクローズド・インテグラル度が高くなる。それらが普及して成熟すると標準化と汎用化が起こって,オープン・モジュラー度が上がって,後発メーカーがキャッチアップしやすくなるが,技術革新を起こし続けていれば,モジュラー化は起こりにくい。

<中略>
 内燃機関を持つ小型乗用車のアーキテクチャが変わりにくいとすると,本格モジュラー化は,電池とモータだけで走る電気自動車が主流になったときに起こると考えられる。機械部品が大幅に減り,車両を統合制御するソフトウエアが車種ごとの乗り心地などを決めるようになれば,汎用化された標準部品を買ってきて組み立てたとしても,製品としての差別化を図り,高品質なクルマをつくることができそうだ。自動車はパソコンと違って,「走る」「曲がる」「止まる」という機能が必要で,機械部品は決してなくならないが,それでもモジュラー度が高まることは確かだろう。

 アーキテクチャの視点から言うと,そこに米国企業が再び競争力を上げられる可能性が見える。電気自動車が本格量産期を迎える際にはおそらく,米国メーカーはオープン・モジュラー寄りの,日系メーカーはクローズド・インテグラル寄りのクルマを出すことになると思われる。どちらが主流になるかを決めるのは顧客や市場だが,今のところ可能性は半々ではないかと思う。

 電気自動車という、新しい土俵ができたとき、米国型の生産方式の挽回のチャンスが来るというのです。
 企業のビジネス形態でも標準化パッケージシステムを使用する欧米方式か、カスタマイズまたは独自開発システムの日本式かの議論があります。あるセミナーで、ホンダはトヨタに負けないためには、ホンタの文化が生かせる独自開発システムは必須であると断言しておられました。

 ビッグスリーが再建計画を構築するなかで、これまでの汎用部品での大量生産方式を貫いて、電気自動車時代の到来での勝負にかけるのか、日本メーカーに学んで取り入れようとした生産方式(リーン生産方式)に改革するのか、今後の動向に注目するとともに、中国を含めた生産方式の決着に興味が尽きません。


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by yuji_oga | 2008-11-24 21:21 | 企業改革 | Trackback
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