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業績好調のサムスンも焦りがある

 ウォン高に円安が追い打ちをかけ、G20で窮状を訴えアベノミクスを為替操作と追及しようと仲間を募る工作をすすめる韓国にあっても、好業績決算を発表し、ゆるぎない成長を続けるサムスン。
 最近は「イノベーション力」を声高にアピールする局面が増えているのだそうですが、そのことがむしろ焦りを露呈させていると言うのです。その理由を解説しているのが、日経の記事。




 
業績好調サムスン、変身願望の裏にある焦り  :日本経済新聞

 5日に発表した2013年1~3月期の連結営業利益の見通しが前年同期比53%増と業績好調が続く韓国サムスン電子。最近は「イノベーション(技術革新)力」を声高にアピールする局面が増えている。自信に裏付けられたように映るが、むしろ焦りが透けて見える。その理由とは……。
<中略>

■追随者の「イノベーター」宣言
  家電の世界はアナログ時代もデジタル時代もリード役は日本メーカーがつとめてきた。ビデオデッキ、DVDの開発、そしてブラウン管テレビから薄型テレビへの変化――。いずれも日本が切り開き、サムスンは追随した。
 そしてこの10年間、サムスンが追いかけたのは、米アップル。デジタル音楽プレーヤー、スマホ、タブレット端末の市場を生み出し、世界が認めるイノベーター企業である。かたや、
サムスンは自らも認める「ファストフォロワー(迅速な追随者)」(常任顧問の李潤雨=イ・ユンウ)。斬新な発想というより、猛烈なスピードと量で圧倒する経営が最大の強みだった。
 
なぜ、ここにきて、焦りととらえられてもおかしくないほど、「イノベーター宣言」を繰り返しているのだろうか
 
理由を探ると、昨夏の出来事にたどり着く
 「争ったのは賠償金の額や特許の問題ではなく、価値観だ。盗むことは許されない」――。米連邦地裁が、サムスンによる米アップルの特許侵害に傾く陪審評決を出した昨年8月。アップルの出したコメントからは、サムスンへの敵意がにじみでていた。
 裁判官や世間に対して、アップルが問うているのは「模倣か否か」。つまり、
イノベーターはどちらかという、根源的な問いかけだ。もし、サムスンが裁判で無残な負け方をすれば、せっかく上昇した「SAMSUNG」ブランドにも傷がつく。
<中略>

■モーレツの功罪
 会長の李健熙(イ・ゴンヒ)は2006年、「
サムスンならではの独自性を実現しよう」と経営幹部や社員に訴えた。いわゆる「創造経営」宣言だ。
 その目標を端的に言えば、iPhone、古くはソニーの「ウォークマン」のような製品を世に出すことだった。その延長線上で生まれたのが、「S4」などの新製品群といえるが、創造経営は道半ばの段階としか言いようがない。
 研究開発に充てる莫大(ばくだい)な原資を持つはずなのに、
創造経営への転換がなかなか進まない原因の1つが、サムスンの成長を支えてきた「モーレツ」な社風である。
 「21世紀には1人の天才が10万人を養う」。会長の李は1994年の段階で飛び抜けた社員の重要性を強調。「S級人材」と呼ぶ、とりわけ優れた人材を外部からスカウトすることで、最先端の技術を補ってきた。2011年7月にもS級人材について「5年、10年後のために直ちに確保しなくてはいけない」と改めて指示した。
 スピード重視のキャッチアップ経営にはもちろん有効。ただし、それで全く新しい分野を切り開いたり、技術革新を生む環境を作り上げたりできるかどうか……。
 そもそも、サムスンは若年層の雇用難が続く韓国で最高の人材を獲得している。サムスンマンの肩書はエリートの代名詞。社員の多くは服装が洗練され、物腰も柔らか。太った人が少ないともいわれる。自制心の強さの半面、
エリートゆえの没個性は否定できない、という風評だ。
 必達の厳しい数値目標を課される社員が多いうえ、仕事量も増える一方。ベテラン、若手を問わず、「
目の前のビジネスで結果を求めながら、創造的な新しい事業を探せというのは矛盾している」との声が強まっているという。
 李自身も迷っているはずだ。2010年5月にグループ「
成長5分野」を掲げたが、このうちバイオ後発薬は臨床試験の段階でいったん中断太陽電池も中国製の増産で供給過剰による価格低迷に見舞われた。このほかも医療機器や発光ダイオード(LED)など日本企業の手あかがついた事業ばかりだ。近年になっても全く新しい分野を自ら開拓した例は見あたらず、それが周辺分野のカテゴリー開拓に向かう一因となっている。
 「妻と子以外はすべてを変えてみよ」。李は20年前、こう宣言した後、半導体などへの集中投資に猛烈に走り始める。「新経営」宣言と呼ばれる社内メッセージだった。そこからサムスンの成長が始まった。

■未知の水路へ
 2012年12月期通期の連結営業利益は前の期に比べて86%増の29兆500億ウォン。日本円換算では約2兆5千億円とトヨタ自動車の過去最高益(08年3月期の連結営業利益が2兆2703億円)と肩を並べる。赤字続きのソニーやパナソニックなどは眼中になく、シャープに支援の手を差し伸べるほどの高みにたった。5日発表した今年1~3月期の業績見通しで、売上高が前年同期比15%増の52兆ウォン前後、営業利益も53%増の8兆7000億ウォン程度となり、増収増益を続ける。
 表向きのサムスンの経営は順調ゆえに、「創造経営」を形にできない課題がくっきりと浮かび上がってきている。最近の製品は独自の斬新な機能を備えているかもしれないが、少なくとも「スマホの次」につながるようなものではない。
 
「今までは灯台のような先進企業があったが、これからは未知の水路を自ら進まなければならない」。会長の李は何度も警告を発してきたが、サムスンは今のところ、答えを示していない。
  =敬称略 (尾島島雄)


 日本のIT関連企業が技術でリードし、世界を席巻した後、市場を忘れ新しい性能技術を組み入れれば売れると驕りともいえる勘違いをしました。携帯電話のカラパゴス化で世界市場から脱落した例は、その典型ですね。
 液晶画面やテレビ、冷蔵庫などでも、コストダウンへの投資合戦や、新興国の消費にあわせた過剰品質を削ぎ落した商品設計など、自動車も含め韓国や中国企業の追随と逆転を許しました。
 
 日本の企業を追い越し、アップルも射程圏に収めトップの座を争うことになったサムスンが、トップランナーとして道を切り拓いていかねばならなくなった今、名実ともにトップ企業としてのブランド価値を獲得するには、独自の品質を誇る製品の上市を目指すのは、必然のなりゆきでしょう。
 開発のリスクを避けて二番手で利益を追求する経営手法と、新技術の新製品を開発することで高付加価値の製品での利益を追求する手法の二つがあります。技術力の高い日本企業と一口に言いますが、有名大企業と言えど、二つのタイプに分類できますね。
 ただ、世界でも指折り数えられるようになった企業は、かつて前者でありながら、後者の能力も併せ持ったからと言えますし、トップレベルから陥落している企業は、後者の能力を失っているのですね。

 サムスンが遭遇する未知の後者への道。理解していて目指していながらもなかなか達成できない。「イノベーション力」を声高にアピールすればするほど、その焦りが透けて見えるというのです。
 とは言え、日本の企業が束になってかかってもかなわないまでになったサムスン。どんな手を産み出してくるのか、産み出せず日本の没落した企業と同じ道を辿るのか。注目ですね。



業績好調のサムスンも焦りがある_b0055292_17343751.jpg

  この花の名前は、バイカオウレン  撮影場所;六甲高山植物園 (2013年2月撮影)

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by yuji_oga | 2013-04-09 17:40 | 企業改革
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