今、外食産業全体が苦戦しており、さまざまな手法で生き残りを図っている。そうしたなかで大きな方向転換を行っているのが、ドーナツ専門店のミスタードーナツ(以下、ミスド)。
2017年11月からトーストや惣菜系パイなどの軽食メニュー「ミスドゴハン」を開始し、今年2月からはパスタやホットサンドなど、より本格的な食事の提供を始めている。 ドーナツ専門店だったはずのミスドが、なぜ「ミスドゴハン」なのだろうか。 売上激減のミスド、「ゴハン」参入の裏にコンビニとの「共倒れ」…日本の消費者の根本的変化 | ビジネスジャーナル 2018.04.22 真島加代/清談社 居酒屋、ファストフード、ファミリーレストラン……今、外食産業全体が苦戦しており、さまざまな手法で生き残りを図っている。そうしたなかで大きな方向転換を行っているのが、ドーナツ専門店のミスタードーナツ(以下、ミスド)だ。 ミスドは2017年11月からトーストや惣菜系パイなどの軽食メニュー「ミスドゴハン」を開始し、今年2月からはパスタやホットサンドなど、より本格的な食事の提供を始めている。 しかし、ドーナツ専門店だったはずのミスドが、なぜ「ミスドゴハン」なのだろうか。経済評論家の加谷珪一氏は、「そこには、ミスドのみならずコンビニも含めた軽食業界全体の変化がある」と指摘する。 ■もはやドーナツだけで経営は無理? 加谷氏は、ミスドは「もはやドーナツだけで経営をしていくのは厳しい状況にある」と言う。 「ミスド側は、ミスドゴハンによって『顧客の利用動機を拡大したい』としていますが、これはつまり、ドーナツだけでは不十分ということ。そこで、『ミスドで食事をする』という需要を取り込もうとしているのです」(加谷氏) ミスドでは、以前から「汁そば」などの飲茶メニューも提供しているが、あくまでサイドメニュー的な扱いだった。しかし、今回のミスドゴハンでは、店舗キッチンの強化などをはじめ、以前とは明らかに力の入れ方が違うという。 「現在、ミスドはキッチン機能を強化してメニューを増やし、業態転換を図っている最中です。ただし、キッチンを強化するとスタッフが不足してしまう可能性が高い。そこで、キッチンがある大きな店を拠点にして、その近辺にはキッチンがない小さな店を展開し、そこに大きな店でつくった商品を配送するなどして、店舗の規模を二極分化することで人手不足の解消を模索しているようです」(同) 確かに、「キッチンの強化」と一口に言っても、スタッフの技術訓練や設備投資、人件費など多くの問題が出てくる。言い換えれば、それらの高いハードルをクリアしてでも、ミスドは食事メニューを充実させる必要性があったのだ。 ■ミスドとコンビニ、ドーナツ戦争で共倒れ 業態転換には、ミスドの業績不振が深く関係しているという。ミスドの「全国チェーン店お客様売上高」を見ると、13年3月期の1112億1300万円から右肩下がりで、17年3月期には818億1400万円にまで落ち込んでいる。 なぜ、ミスドの業績が下がっているのか。それにはさまざまな要因が考えられるが、ひとつには日本の実質賃金が下降線をたどっていることがある。 「ドーナツの本場のアメリカでは老若男女を問わずドーナツを食べる習慣がありますが、日本のドーナツ市場の主なターゲットはまとめ買いをして自宅で食べるファミリー層と店内利用の高校生です。しかし、家計が苦しくなれば食費を切り詰める必要が出てきて、高校生のお小遣いも減っていく。そうなると、嗜好品であるドーナツは必然的に選ばれなくなってしまうんです」(同) また、「ドーナツ市場にコンビニが参入してきたことも、ミスド不振の要因となった」と加谷氏は指摘する。 「コンビニがドーナツに進出したのは15年のことで、その背景にはコンビニコーヒーの成功体験がありました。コンビニがコーヒー販売を始める前は、既存のカフェチェーンとの顧客の奪い合いが懸念されましたが、実際は客を奪い合うどころか、より多くの人がさまざまな方法でコーヒーを飲むようになった。それにより、一気に市場が広がったんです」(同) コーヒーと甘いドーナツは相性がいい。コーヒーとともにドーナツを提供すれば、さらに市場を拡大できる。しかも、コーヒーの前例を見ると、既存チェーンとの客の奪い合いもそれほど心配なさそうだ。セブン-イレブンがレジ横での販売を始めるなどコンビニ各社がドーナツに参入した裏には、そんな思惑があったということだ。 しかし、この戦略は失敗だった。なぜなら、コーヒーと違って日本のドーナツ市場は、ほぼミスドの独占状態だったからだ。 「日本では、『ミスドの売上高=ドーナツの市場規模』と見てもいいほど、ドーナツ市場の規模が小さい。その小さい市場がただでさえ縮小傾向にあったのに、コンビニの参入で客の奪い合いが起き、共倒れに近い状況になってしまった。コンビニ各社は早々にドーナツから手を引きましたが、ミスドはドーナツから手を引くわけにはいきません。そのため、かなりの苦境に立たされてしまったのです」(同) そんななかで昨年11月に始めたのがミスドゴハンであり、今年2月からの本格的な食事メニュー提供というわけだ。 ■5年後には外食店とコンビニの区別がなくなる? 主力商品以外にメニューのレパートリーを増やす外食チェーンは、ミスドだけではない。代表的なのが、「吉呑み」を打ち出している牛丼チェーンの吉野家だ。 「牛丼店でちょい飲みを提供する『吉呑み』は、業態転換の顕著な例です。サッと食べる牛丼だけではなく、『会社帰りに1~2杯飲みたい』というニーズを取り込んでいます。牛丼チェーンは生き残りが激しい業態なので、吉野家の動きは早かったといえます」(同) そこで生まれたのは牛丼チェーンと居酒屋チェーンの客の奪い合いだが、その後、ファミレスやハンバーガーチェーンなどもちょい飲みを取り入れた。こうなってくると、次はコンビニと外食産業全体の客の奪い合いが始まるという。 「ファミレスやファストフードがちょい飲みニーズを取り込めたとしても、生き残れるかどうかはわかりません。ちょい飲みは家飲みニーズとの親和性が高いため、次の段階ではコンビニなど小売店との戦いが始まるでしょう。すでに、コンビニ側も惣菜のレパートリーを増やし、家飲み客を狙っています。このように、本来は別の業界だったはずの飲食と小売の垣根がなくなりつつあるというのが、近年の傾向です」(同) そして、業界を超えた熾烈な争いの結果、「これから5~7年のうちに、コンビニと飲食店の区別はほとんどなくなるでしょう」と加谷氏は予想する。 実際、セブンは創業以来初となる店舗の基本レイアウトの大幅な変更を進めているという。新型店舗では、おでんなどのレジ前商品や食品を拡充し、雑誌スペースを廃止してイートインスペースを確保する予定だ。 「イートインスペースが充実すれば、そこでお酒を飲む人や勉強をする人も増えるでしょう。飲食店との区別は、ほとんどなくなることが予想されます。どこに行っても同じものが食べられる半面、外食そのものに魅力がなくなり、消費者にとっては“つまらない時代”になってしまうかもしれません」(同) ■業態転換の難しさを物語る、ミスドの現状 こうした状況を考えると、満を持して始まったかのように見えるミスドゴハンだが、加谷氏は「スタートダッシュに遅れた感は否めない」と言う。 「ミスドの経営母体であるダスキンは、家庭用具の貸出サービスで成功を収めた企業です。ミスドはダスキンのフード部門として始まりましたが、今や日本のドーナツ市場をほぼ独占していることを考えると、成功しているといえるでしょう。 つまり、ダスキンは2つの事業で成功した稀有な例となったわけですが、そこで油断したことで、時代の流れに大きく乗り遅れてしまった。皮肉な話ですが、ミスドの例は複数の事業で成功した後の業態転換の難しさを物語るケーススタディになってしまいました」(同) ミスドゴハンの主軸であるパスタやホットサンドといった軽食もライバルが多く、生存競争は熾烈を極めることが予想される。果たして、ミスドの戦略は成功するのだろうか。 ●取材協力/加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に入社。野村證券グループ投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。現在は、経済、金融、ITなど多方面の分野で執筆活動をおこなう。著書に『ポスト新産業革命「人口減少」×「AI」が変える経済と仕事の教科書』(CCCメディアハウス)などがある。 業態転換には、ミスドの業績不振が深く関係しているのだと。 なぜ、ミスドの業績が下がっているのか。 ひとつには日本の実質賃金が下降線をたどっていること。家計が苦しくなると、嗜好品であるドーナツは必然的に選ばれなくなってしまう。 また、「ドーナツ市場にコンビニが参入してきたことも、ミスド不振の要因となった」と加谷氏は指摘。 コンビニがドーナツに進出したのは15年のことで、その背景にはコンビニコーヒーの成功体験があった。 しかし、このコンビニのドーナツ進出戦略は失敗だった。なぜなら、コーヒーと違って日本のドーナツ市場は、ほぼミスドの独占状態だったからだ。 つまり、日本のドーナツ市場は規模が小さい。その小さい市場がただでさえ縮小傾向にあったのに、コンビニの参入で客の奪い合いが起き、共倒れに近い状況になってしまった。 そんななかで昨年11月に始めたのがミスドゴハンであり、今年2月からの本格的な食事メニュー提供。 主力商品以外にメニューのレパートリーを増やす外食チェーンは、ミスドだけではない。代表的なのが、「吉呑み」を打ち出している牛丼チェーンの吉野家。 次はコンビニと外食産業全体の客の奪い合いが始まると。 加谷氏は、「これから5~7年のうちに、コンビニと飲食店の区別はほとんどなくなるでしょう」と。 セブンは創業以来初となる店舗の基本レイアウトの大幅な変更を進め、新型店舗では、おでんなどのレジ前商品や食品を拡充し、雑誌スペースを廃止してイートインスペースを確保するのだそうです。 ダスキンは2つの事業で成功した稀有な例となっていた。しかし、そこで油断したことで、時代の流れに大きく乗り遅れてしまった。 「ミスドゴハン」の軽食市場もライバルが多く、生存競争は熾烈を極めることが予想される。そこへ、コンビニも参戦済み。 コンビニと飲食店の区別はほとんどなくなると見込まれる市場に、遅れて参入するミスド。 各社の競争が、消費者にとって魅力ある新しい"場"を産み出していただけることを期待します。 この花の名前は、ユキワリイチゲ ↓よろしかったら、お願いします。
by yuji_oga
| 2018-04-23 03:28
| 気になる話
|
カテゴリ
最新のトラックバック
以前の記事
良く徘徊させていただいている先
フォロー中のブログ
ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||