在庫が底をつく大人気の国産ウィスキー

 日本産ウイスキーの人気のあるブランドの在庫は尽き、販売中止が続出しているのだそうです。
 今日のヒット商品が蒸留されて樽に詰められた21世紀初頭の予想をはるかに上回るペースで飲まれていることが原因。今回の原酒不足から学べる真の教訓は、あちこちの日本企業で埋もれたり隠されたままになっていたりする、と市場ストラテジストらは指摘しているのだと。

  



 日本産ウイスキーの人気のあるブランドの在庫は尽き、販売中止が続出しているのだそうです。
 今日のヒット商品が蒸留されて樽に詰められた21世紀初頭の予想をはるかに上回るペースで飲まれていることが原因。今回の原酒不足から学べる真の教訓は、あちこちの日本企業で埋もれたり隠されたままになっていたりする、と市場ストラテジストらは指摘しているのだと。

 
大人気で在庫が底をつく日本産ウイスキーの教訓 慎重な企業経営の後味の悪さ、投資不足のツケが浮き彫りに | JBpress(日本ビジネスプレス) 2018.5.28(月) Financial Times

 2003年の米国映画「ロスト・イン・トランスレーション」で、ビル・マーレイはウイスキーのCMに登場する俳優の役を演じ、妖しげな雰囲気を醸し出しながら「リラックス・タイムは・・・サントリー・タイムにしよう」と満足げにつぶやいていた。
 あれから15年。このプロダクトプレースメントが大当たりしたことも手伝って、今日のサントリーにおける時間は、とてもリラックスできるものではなくなっている。

 激賞するレビュー、舌の肥えた消費者、マーケティングの才覚、そして観光ブームなどを背景に、
日本産ウイスキーは21世紀が始まったころ――つまり、今日のヒット商品が蒸留されて樽に詰められたころ――の予想をはるかに上回るペースで飲まれている

 
最も人気のあるブランドの在庫は尽きてしまい、ニッカウヰスキーは2015年に、同社最高級のシングルモルト・ウイスキー数種の販売を中止した。
 サントリーも先日、世界中の愛好家が恐れていたことを渋々認めた。世界でも一流のブレンドウイスキー「響(ひびき)17年」とシングルモルト「白州(はくしゅう)12年」の販売を休止したのだ。
 これはウイスキー産業ならではの悩み、すなわちシェリー樽の製造や設備投資の戦略を決断する際に、遠い将来に生じる消費サイクルのうねりにヘッジなしで賭けなければならない業界特有の災難だ、と読者は思うかもしれない。
 しかし、ウイスキーメーカーは決して特異な存在ではない。
 過去の計算ミスの影響を隠れてやり過ごす場所を、この国の銀行や自動車メーカー、その他の大企業ほどには持っていないだけの話だ。

 
今回の原酒不足から学べる真の教訓は、あちこちの日本企業で埋もれたり隠されたままになっていたりする、と市場ストラテジストらは指摘している。

 「響」のボトルにまだ手を伸ばすことができる目利きなら、そのえもいわれぬ味わいにうっとりしているかもしれない。
 しかし、ぶっきらぼうなビジネス用語で語るとするなら、17年物のブレンドウイスキーはざっと
20年前に経営陣が下した意思決定のタイムカプセルだ。
 「響」のテイスティングノートにはローズマリー、白檀、ライチといった単語が並ぶかもしれないが、
このタイムカプセルから出てくるのは景気の下降、臆病、絶望といった言葉ばかりだ
 その当時下した判断について、あるいは自社製品の人気が後に世界的かつ異様な高まりを見せるのを
予見できなかったことについて、サントリーとニッカウヰスキーの経営陣を本当に責めることはできない

 
21世紀初頭のウイスキーメーカーの市場は、用心すべしと告げているとみて間違いないように思われた。
 ウイスキーの
販売量は何年も前から着実に減少していたうえに、日本中の企業が経費削減と人員削減に取り組んでいたことは、昔からの支えだった法人需要も危機に瀕していることを示唆していた(実際、その通りだった)。
 だが、当時は全員が同じように悲観的な見方をしていた――その精神状態こそが企業の投資や支出を抑制し、デフレをあれほど長く継続させたと主張する向きも一部にはあるだろう。

 1990年代後半から2000年代の初めにかけて、日本は企業の意思決定者にとって明らかに居心地の悪い場所だった。最も無難な選択が常に最善の策であるように見えた。
 1980年代後半の株式・不動産バブルの崩壊も、大きなダメージをもたらしていた。失業率は5%を突破し、過去10年間の平均の2倍近い水準で高止まりしていた。
 日銀が年に4回実施する「企業短期経済観測調査(短観)」は、大企業が業況についてとにかく悲観的であることを示していた。実際、トヨタ自動車の主力工場である高岡工場では、生産台数が33年ぶりの低水準に落ち込んだ。
 サントリーはただ単にウイスキーの仕込みを抑制し、20年後になって、手にしていたかもしれない販売機会のことを考えて顔をしかめるしかない。だがその一方で、ほかの日本企業はそれ以上に重大な結果をもたらす決断を下していた。

 テクノロジー、とりわけ
情報技術(IT)への投資を過小にすることが大流行した結果、多くの日本企業が外国のライバルに大きな後れを取ることになってしまったのだ。

 中でも銀行は、痛ましくなるほど及び腰だった。業界の大再編が始まり、今日なら「フィンテック」と称される技術革新を取り入れる格好の口実ができたにもかかわらず、動こうとはしなかった。
 また、非金融セクターの大手企業グループは今日、中堅の技術専門職が足りないとぼやいているが、それはまさしく、20年前に企業が育成を怠った世代だ。
 取締役会を支配した
超保守的なムードは、グローバル化にも概して抵抗する姿勢を生み出した

 
国際的な人材を今日欲している日本企業は、優秀な社員を世界有数の経営大学院に派遣してMBA(経営学修士)を取得させる取り組みを2000年代初めにほとんどやめてしまったことを、後悔しているかもしれない。

 
2018年になって日本の大企業の多くが見せている行動の特徴は、17年物のウイスキーのメーカーには決してできないことを、すなわち、活力の回復に効く活動によって過去の計算ミスを帳消しにしようとしているところにある。

 例えば、外国への投資が2014年以降盛んに行われているが、この背景には、日本が精神的に落ち込んでいるときに大胆な決断を下していた
外国企業を買えば過去をやり直すことができるという考え方もあるのだ。


 国内のウイスキーの需要全体が、ハイボールの人気復活で大きく伸びていることは、諸兄がご承知の通りです。
 ハイボール人気で飲まれすぎ?サントリーウイスキー2商品が販売休止へ - FNN.jpプライムオンライン

 記事は、激賞するレビュー、舌の肥えた消費者、マーケティングの才覚、そして観光ブームなどを背景に、ヒット商品のウイスキーが樽詰めされた頃の予想を大きく上回るペースで飲まれていることが、原酒不足を招き、生産中止に追い込まれたと指摘しています。

 21世紀初頭のウイスキーの販売量は何年も前から着実に減少していたうえに、日本中の企業が経費削減と人員削減に取り組んでいたデフレが進行していた時代。
 当時の経営陣が下した意思決定のタイムカプセルには、景気の下降、臆病、絶望といった言葉が入り、自社製品の人気が後に世界的かつ異様な高まりを見せるのを予見できなかった。ウイスキーメーカーに限らず、最も無難な選択が常に最善の策であるように見えた時代だった。
 ウイスキーの仕込みを抑制する判断をしたサントリーとニッカウヰスキーの経営陣を本当に責めることはできない状況だった。

 日本企業の取締役会を支配した超保守的なムードは、テクノロジー、とりわけ情報技術(IT)への投資を過小にすることが大流行した結果、多くの日本企業が外国のライバルに大きな後れを取ることになってしまったし、グローバル化にも概して抵抗する姿勢を生み出した。
 2018年になって日本の大企業の多くが見せている行動の特徴は、活力の回復に効く活動によって過去の計算ミスを帳消しにしようとしているところ。17年物のウイスキーのメーカーには決してできないこと。
 このウイスキーの話は、守りに入ったために設けそこなったという話ですが、放漫投資をしていた東芝は、儲け頭のメモリー事業を売却せねばならないこととなりました。

 記事は、見込み違いの過去の計算ミスを帳消しにする活力の回復に効く活動として、国内の景気動向とは異なる環境の海外で成長している企業のM&Aを挙げています。
 日本企業が海外の企業にM&Aをされて復活した話(シャープや日産)はありますが、日本企業が成功している話は稀有です。(ソフトバンクは孫さん)
 販売予測と投資。そのリターンは永遠のテーマです。ウイスキーメーカーの売れすぎて販売中止という、機になる話でした。


 
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  この花の名前は、紫蘭

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by yuji_oga | 2018-05-28 18:13 | 企業改革 | Trackback
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