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首都圏でバイオガソリンの発売開始

 脱石化資源、地球温暖化抑制、農業振興などで注目されるバイオエタノール入りガソリンが、27日から首都圏のガソリンスタンドで試験販売が開始されました。
 大きな期待をもたれているバイオエタノール入りガソリンですが、いろいろな課題も内蔵してのスタートの様です。
 
政府計画、ガス欠の恐れ CO2削減、達成難しく (4/27 読売朝刊)

<前略>
★宙に浮く計画
 「石油業界は、環境先進産業として、自動車燃料の新しいページを開きたい」
 26日朝、バイオガソリンの初出荷式が開かれた横浜市の製油所で、あいさつに立った石油連盟の渡文明会長はこう力説した。
 2010年までに輸送用バイオ燃料を年間50万キロ・リットル(原油換算)導入――。2005年に閣議決定した京都議定書の目標達成計画で、バイオガソリンなどのバイオ燃料は二酸化炭素(CO2)の排出が止まらない運輸部門対策の“有望株”として位置づけられた。今回の試験販売は、その先駆けとなる。

 しかし、その一方で、政府の導入計画は足元でぐらついている。
 バイオエタノールのガソリンへの混合法は2種類ある。バイオエタノールをガソリンに直接混ぜる「E3方式」と、バイオエタノールを石油ガス(イソブテン)と化学反応させたETBEと呼ばれる液体燃料を、ガソリンに混ぜる「ETBE」方式だ。

 導入が決まっているのはこのうち、ETBE方式の21万キロ・リットルのみ。残り29万キロ・リットルをどう達成するのかは道筋さえ見えない。

 というのも、国内の8割以上のガソリンスタンドを傘下に置く石連が、環境省が導入を進めるE3方式に反対を表明。E3に混ぜるガソリンを販売しない意向を示しているのだ。

 海外では農業振興の面からもバイオエタノールを直接混ぜる方式が主流なのだそうです。
 今回農水産省もなびいた石連の「ETBE方式」では、エタノールとともに一定量のイソブテンを混合する必用があり、ガソリンを使わずETBEだけにしても50%はイソブテンとなり、石油精製時にできるイソブテンは供給量が少なく、40万キロリットルが限界とされ、安倍首相が導入を指示した600万キロリットルはおろか、京都議定書の目標(温室効果ガス排出量 6%削減(1990年比)で、運輸部門ではバイオエタノールを50万キロリットル導入し、約140万トンののCO2排出量削減)が達成できないものなのです。
 
 石連が反対する理由は、施設改造費が「E3方式」だと数千億円余計にかかることと、品質や脱税面で不具合があるというものです。
 
 環境庁は「E3方式」の実用化に向けた実証実験を、大阪府で計画しているそうです。
 首都圏が農産省+石連、大阪が環境省と、東西対抗の様相です。
 石連が反対する「E3方式」では、出来たエタノールを混ぜるガソリンが無いとのことで、石連に加入していない石油元売り会社のガソリンを使うのだそうですが、供給量がわずかで目標を達成できません。

 原油高騰で利益を出した石油会社が、地球を救う為の投資として数千億円の設備投資を渋ることへの非難もさることながら、混合方式を1種類に絞り込み限定し、他方式の実験を阻害している自由のなさ、チャレンジの欠如には理解できない姿勢と言わざるをえません。

 バイオガソリンは、レギュラーガソリンと同価格に設定されていて、製造原価は高く、その差額は国と石油会社が折半するのだそうですが、京都議定書の運輸部門の目標を達成する為の政府の中長期の政策確立と、方策の実施・指導が強く求められます。

 ブラジル等の果実生産国が、バイオエタノール用サトウキビに転作を進めていることから、輸入果実が値上がりし、大手飲料メーカーの果汁入り飲料が、5月から値上がりするのだそうです。
 エタノール需要急増で果汁飲料値上げ : 経済ニュース : 経済・マネー : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 そういえば、近所のスーパーのオレンヂも一個100円だったのが、125円に値上がりしていました。それではと、国産のはっさくを見ると、こちらも同様に値上がり...。

 また、バイオエタノールは地球温暖化抑制に寄与するのかとの研究論文も出始めています。
 
温暖化ガス、増加の試算も (4/27 読売朝刊)

 カリフォルニア大学のアレクサンダー・ファレル助教授は昨年 1月、米科学誌サイエンスに発表した論文で、燃料をガソリンからエタノールに切り替えた場合、温室効果ガスの排出量は最大で32%減らせるが、逆に20%増えることもあると述べている。
 バイオエタノールの原料となるトウモロコシやサトウキビなどの耕作には、燃料が必用な農業機械が使われ、エタノールをブラントなどで生成する際も石油などが使われるからだ。

<中略>
 国内でも、産業技術総合研究所ライフサイクルアセスメント研究センターが、生産から輸送、使用までの全課程で出る温室効果ガスの量を、ガソリンと100%エタノール(E100)で比較した。
 国内で使うエタノールをタイ産サトウキビで作るという想定で、その結果はエタノール製造にかかる温室効果ガス排出量は、ガソリンと比べて39%減から 8%増とばらついた。エタノール生産でガスが増えてしまう理由は、CO2の数百倍の温室効果を持つ亜酸化窒素が、耕作に使う肥料から出るからだ。
 これに対し、エタノール導入計画を議論した経済産業省の調査会では、エタノールを海外から輸入した場合、CO2を約 8割減らせ、国内の建設廃材を材料にしても約 7割減らせるという見積を示している。

 そのほかにも、エタノール生産用原料の耕作面積拡大のための森林伐採も上げられています。

 石化資源は有限であり、その争奪に各国が競い合っていますし、石化資源産出・供給を質にして覇権を拡大する国も出現しています。
 生産工程の温暖化効果ガス排出量が極度に増えてしまうのは困りますが、脱石化として、さらに栽培可能資源として更なる研究が進められる事を願っています。

 それに対し、将来の展望のない目先の自分の利益にこだわり、実験への協力も拒む石油連盟の姿勢は、なんとしても改めて頂きたいものですし。政府(経産省あたりか、首相)の強いリーダーシップが求められます。

 
海外のバイオエタノール導入手法 (4/27 読売朝刊)

■米国
  自国産のトウモロコシなどを原料に、エタノール10%を直接混合したE10ガソリンが増加。
  一部でE85も使用。
  2012年までに年間2,800万キロリットルのエタノール使用を計画

■ブラジル
  自国産サトウキビを原料に、ガソリンに20~25%のエタノール混合を義務づけ。
  E20~25が主流だが、地区によってはエタノールだけで走るE100も流通

■欧州
  余った麦などを使い、スエーデンやポーランドで、エタノールを 5~10%を直接混合したガソリンを市販。
  ドイツ、フランス、スペインではETBEを利用

■アジア
  インド、タイでE5、E10などの直接混合方式を導入。
  中国でもE10の試験導入を開始



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by yuji_oga | 2007-04-29 22:40 | 地球温暖化
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